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■2018年3月10日に行われた北方山草会講演会の要旨(2018.3.16)


 今年の演者は事務局の五十嵐博さんです。「2017年のキンポウゲ科」としてライフワークとしている植物の道内分布に関するお話しでした。

 ハプニングにより講演時間に余裕があったので、初めはキンポウゲ科、後半はその他の植物も含めて北海道内の分布が解説されました。

 なお、演者は2020年頃を目標に「北海道維管束植物の分布型」というタイトルで出版準備を進めているそうです。

 全体として、渡邊定元・大木正夫の東北海道における温帯要素について(1960 北陸の植物,8:97-101)と比較しながら、道央以南に分布する植物を中心に全道に分布する植物との比較を交えながら写真と分布図を使った解説がありました。

 渡邊・大木(1960)について簡単に触れると、温帯起源の植物が最終氷期以降(多分)どのように北海道に分布を広げているかということを6パターンに分けて説明したものです。
その6パターンとは
A:ブナ型
B:トチノキ型
C:ドクウツギ型
D:クリ型
E:アカシデ型
D:タニウツギ型
で、図を引用します。


 話を総合すると演者は上記の6パターンに加え8つのタイプを分けていました。6パターンについてはブナ型を黒松内低地帯以南に分布するもの、トチノキ型を石狩低地帯以南に分布するもの、ドクウツギ型を日本海北上型(1と2に分けていたが違いが分からなかった)、クリ型を日高型、アカシデ型を太平洋東進型、タニウツギ型を内陸に入るタイプと説明していました。

 加えた8タイプは、全道型、道央型、道東型、サワグルミ型:道南型(八雲町以南に分布するもの)、道北・道南型(北と南に多い)の地域タイプと、湿原型、海岸型、高山型の環境タイプがありました。この中でサワグルミ型:道南型が今回演者が見出した分布パターンとのことでした。

 分布を解説された植物を上記のタイプ別に分けて並べると次のようになります。

ブナ型
 ブナ、サンリンソウ、センニンソウ、ヒメモチ、ヒメアオキ

トチノキ型
 トチノキ、オクトリカブト、ヤマジノホトトギス、オオバクロモジ(きれいにパターンが出ている)、ウワミズザクラ

ドクウツギ型
 ドクウツギ、タチカメバソウ

クリ型
 クリ、コキツネノボタン、ミヤマカラマツ、クマガイソウ、コゴメウツギ、サクラソウ、(オオアカネ)

アカシデ型
 アカシデ、ムラサキケマン、サクラスミレ、ヒカゲスミレ

タニウツギ型
 タニウツギ、キクザキイチゲ、リョウメンシダ

全道型
 アズマイチゲ、アカミノルイヨウショウマ、エゾノリュウキンカ コバノハイキンポウゲ

道央型
 チョウジソウ、トケンラン、サワシロギク、(オオアカネ)

道東型
 エンコウソウ、シコタンキンポウゲ、エゾノウワミズザクラ、カラフトイバラ、エゾネコノメソウ

サワグルミ型:道南型
 サワグルミ、クサボタン、アラゲヒョウタンボク、オオイワカガミ、ミヤマイラクサ、タマブキ

道北・道南型
 エゾキンポウゲ

湿原型
 イトキンポウゲ

海岸型
 ハマナス

高山型
 イワブクロ

おまけ
 会誌35号に門田さんが書いているが、最近せたな町で発見され、主に東北地方の日本海側に分布するツルキツネノボタンと似た植物は未記載種であるかも知れない。ここでは、仮称ヒヤマツルキツネノボタン ブナ型 としていた。
 コバノハイキンポウゲ 全道型 は誤同定が多い種のひとつ。原因は東北海道の植物(滝田1987)が誤っていたためらしい。

(画像提供:五十嵐博、文責:新田紀敏)

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